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中小企業向け!テレワークの始め方完全ガイド

中小企業向け!テレワークの始め方完全ガイド 効率化・人手不足対策

2020年のコロナ禍以降、テレワークという働き方が一般的にもよく知られるようになり、テレワークの社内規程を作りたいというニーズが増えてきたように思います。また、テレワーク導入をテーマにした講演依頼も増えてきました。

  • テレワークとは何か?
  • テレワークを導入するメリット?
  • テレワークに関する統計データ
  • テレワークの導入方法
  • テレワーク時の労務管理
  • テレワークで必要なビジネスICTツールとは
  • セキュリティ対策
  • テレワーク導入で使える助成金・補助金 など

上記の内容を1~2時間で説明してほしい!という依頼です。全部大事なことですが、限られた時間で全てをお伝えしようとすると、表面をさらっとなぞるような説明になりがちです。そこで、テレワークの始め方を知りたい人が、インターネットでいつでも、何度でも見られるように、ブログでテレワークの始め方を分かりやすくまとめたいと思いました。

このページでは、テレワークを導入したいと考えている中小企業の経営者さん、人事労務担当者さん向けに、テレワークの始め方を分かりやすく伝えます。

難しい言葉はなるべく使わないようにしますので、安心してください!

  1. 【STEP1】テレワーク・リモートワークとは?
  2. 【STEP2】まずはテレワークの形態と対象範囲を選ぼう
    1. テレワークの形態
    2. 対象範囲
    3. 対象範囲・テレワーク形態の組み合わせ例
    4. 【STEP2】まとめ
  3. 【STEP3】テレワークでのシステム方式を決めよう
    1. VPN方式(会社PCの持ち帰り方式でVPN接続する場合)
    2. リモートデスクトップ方式
    3. 仮想デスクトップ(VDI)方式(仮想デスクトップ方式)
    4. セキュアコンテナ方式(アプリケーションラッピング方式)
    5. セキュアブラウザ方式
    6. クラウドサービス方式(クラウド型アプリ方式)
    7. スタンドアロン方式(会社PCの持ち帰り方式でオフラインで作業する場合)
    8. 【STEP3】まとめ
  4. 【STEP4】セキュリティ対策をしよう
    1. 【事前対策】セキュリティ対策の優先順位
    2. 【1】マルウェア感染対策
    3. 【2】不正アクセス対策
    4. 【3】端末の紛失・盗難対策
    5. 【4】情報の盗聴への対策
    6. 【STEP4】まとめ
  5. 【STEP5】テレワークのルールを作ろう
    1. 前提条件
    2. 雇用契約書や労働条件通知書で「就業の場所」を明示する
    3. 「労働時間」の確認方法を決める
    4. 「通勤手当」を見直す
    5. 就業規則に「費用負担」を定める
    6. 【STEP5】まとめ
  6. 【STEP6】ICT環境づくりをしよう
    1. マネジメント
    2. コミュニケーション
    3. セキュリティの確保
    4. 【STEP6】まとめ
  7. テレワーク導入に使える助成金・補助金
  8. 【ケース別】テレワーク環境構築事例
  9. むすび
著者プロフィール
林 利恵
林 利恵
Rie HAYASHI, MPH, PhD

博士(医学)
特定社会保険労務士
ISO30414 リードコンサルタント/アセッサー

東豊社労士事務所 代表
株式会社東豊経営 代表取締役

≫詳しいプロフィールはこちら

ご連絡は【お問い合わせフォーム】からお願いいたします。

【STEP1】テレワーク・リモートワークとは?

テレワークとは、離れたところで(tele)と働く(work)を合わせた造語です。なお、リモートワークのリモートは、遠い(remote)という意味ですので、テレワークとリモートワークには特に違いは無いと考えます。

総務省によると、テレワークとは次のように定義されています。

テレワークとは、ICT(情報通信技術)を利用し、時間や場所を有効に活用できる柔軟な働き方です。

「柔軟な」働き方であって、「自由な」働き方ではないことがポイントです!

【STEP2】まずはテレワークの形態と対象範囲を選ぼう

テレワークの形態

雇用型

  • 在宅勤務…自宅が就業場所になります。通勤時間が無いことが特長です。
  • モバイル勤務…PCの小型化やポケットWi-Fiによりいつでも、どこでも、就業できます。
  • サテライトオフィス勤務…所属する就業場所と異なる、特定の施設で就業できます。

自営型

個人事業者や小規模事業者等が行うテレワークのことです。会社との関係は「雇用契約」ではなく、「業務委託契約」や「請負契約」になります。

このコラムでは「雇用型」のテレワークについて解説します

対象範囲

  • 対象者
  • 対象業務
  • 実施頻度

について、順番に解説します。

このパートの最後に「対象者」「対象業務」「実施頻度」組み合わせの例を紹介します!

対象者

テレワークの対象者を決めます。

特に決まりはありません。

様子を見ながら少しずつ始めたい場合は、職種やライフステージに限定して始めてはいかがでしょうか?

  • 【職種】特定の職種、業務を担う社員
  • 【ライフステージ】仕事との両立支援を必要とする社員
  • 【緊急事態】全員
  • 【福利厚生】希望者全員

それでも、「社員に離れた場所で仕事をさせて不安…」と、対象者を決められない場合は、経営者や役員がテレワークを体験してみるのもオススメです。

テレワークの対象者を「正社員」「非正規社員」という雇用区分だけで選ぶことはNGです!

対象業務

導入時には、どのようなビジネスICTツールが必要なのか、見極めることが難しいので、まずは会社に既存のツールだけを使って対象になり得る業務を選ぶと良いと思います。

実際に運用してみると、何かしら課題が見つかると思います。

課題の解決に使えそうなビジネスICTツールについては、後で解説します!

テレワークを導入時の対象業務の例を紹介します。共通点は、PCとインターネットがあればできる業務です。

  • データ入力作業
  • 資料の作成・修正・管理
  • 企画・調査
  • 研修・会議・面談
インターネットFAXやIP電話の導入

実施頻度

令和2年度テレワーク人口実態調査-調査結果- 国土交通省 令和3年3月の「テレワーク実施頻度推移(H28~R2)」より、

テレワークの実施頻度は、「1週間平均で約2日」でした。

テレワーク導入の初期段階では、出社勤務とテレワーク勤務を組み合わせて、実施頻度を少な目に設定したほうが良いと思います。

なぜなら、テレワーク導入の初期では、次の課題が想定されますので、出社で課題の共有や解決策の検討などをするためです。

  • テレワーク実施者も出社している社員もテレワークに慣れていない
  • ビジネスICTツールを使いこなせていない
  • 会社業務のデジタル化が進んでいないので、テレワークでは限界がある

対象範囲・テレワーク形態の組み合わせ例

業種・対象者・対象業務・実施頻度・テレワーク形態の組み合わせは自由自在です。

私がテレワーク導入支援を行った例を紹介します。

  • 製造業・配偶者の転勤による転居・商品企画業務・週5日・在宅勤務
  • 情報通信業・全員対象・随時・在宅勤務およびサテライトオフィス勤務
  • 建設業・営業職の社員・営業業務・随時・モバイル勤務
  • 医療福祉業・訪問介護ヘルパー・訪問介護・随時・モバイル勤務

【STEP2】まとめ

以上【Step2】ではテレワークの形態と対象範囲について解説しました。

テレワークを始めるとき、まずは次の4項目を決めましょう。

  • テレワークの形態
  • 対象者
  • 対象業務
  • 実施頻度

次は、【STEP3】テレワークでのシステム方式について解説します。

【STEP3】テレワークでのシステム方式を決めよう

テレワークでのシステム方式は、「テレワークセキュリティガイドライン第5版(総務省 令和3年5月)」では次の7つに分類されています。

  • VPN方式(会社PCの持ち帰り方式でVPN接続する場合)
  • リモートデスクトップ方式
  • 仮想デスクトップ(VDI)方式(仮想デスクトップ方式)
  • セキュアコンテナ方式(アプリケーションラッピング方式)
  • セキュアブラウザ方式
  • クラウドサービス方式(クラウド型アプリ方式)
  • スタンドアロン方式(会社PCの持ち帰り方式でオフラインで作業する場合)

各方式の「概要」「メリット」「デメリット」については別記事で解説していますので、詳しくはこちらもご参照頂きますと幸いです。

VPN方式(会社PCの持ち帰り方式でVPN接続する場合)

テレワーク端末からオフィスネットワークに対してVPN接続を行い、そのVPNを介してオフィスのサーバ等に接続し業務を行う方法です。

VPN方式とは、テレワーク端末からオフィスネットワークにVPN接続を行い、オフィスネットワーク内のサーバー等に接続して業務を行う方法です。

リモートデスクトップ方式

テレワーク端末からオフィスに設置された端末(PC等)のデスクトップ環境に接続を行い、そのデスクトップ環境を遠隔操作し業務を行う方法です。

仮想デスクトップ(VDI)方式(仮想デスクトップ方式)

テレワーク端末から仮想デスクトップ基盤上のデスクトップ環境に接続を行い、そのデスクトップ環境を遠隔操作し業務を行う方法です。

VDIとはVirtual Desktop Infrastructureの略です。「仮想デスクトップ基盤」ともいいます。

端末の機能を必要最小限にし、

  • OS(Windows、Mac、Linuxなど)
  • アプリ(ソフトウェアのこと)
  • データ

などをサーバーに集めて、端末からはネットワークを介して使用するシステムのことです。

セキュアコンテナ方式(アプリケーションラッピング方式)

テレワーク端末にローカル環境(PCのハードディスク等)とは独立したセキュアコンテナという仮想的な環境を設け、その環境内でアプリケーションを動かし業務を行う方法です。

セキュアブラウザ方式

テレワーク端末からセキュアブラウザと呼ばれる特殊なインターネットブラウザを利用し、オフィスのシステム等にアクセスし業務を行う方法です。

インターネットブラウザとはインターネット(Webサイト)を閲覧するためのソフトのことです。

(例)「Microsoft Edge」「Google Chrome」など

クラウドサービス方式(クラウド型アプリ方式)

オフィスネットワークに接続せず、テレワーク端末からインターネット上のクラウドサービスに直接接続し業務を行う方法です。

クラウドサービスとは、従来は利用者が手元のコンピュータで利用していたデータやソフトウェアを、ネットワーク経由で、サービスとして利用者に提供するものです。

スタンドアロン方式(会社PCの持ち帰り方式でオフラインで作業する場合)

オフィスネットワークには接続せず、あらかじめテレワーク端末や外部記録媒体(USBなど)に必要なデータを保存しておき、その保存データを使い業務を行う方法です。

【STEP3】まとめ

以上【STEP3】ではテレワークでのシステム方式について解説しました。

テレワークでのシステム方式は、次の7つです。

システム方式を単独で使う、または複数のシステム方式を組み合わせて使います。

  • VPN方式(会社PCの持ち帰り方式でVPN接続する場合)
  • リモートデスクトップ方式
  • 仮想デスクトップ(VDI)方式(仮想デスクトップ方式)
  • セキュアコンテナ方式(アプリケーションラッピング方式)
  • セキュアブラウザ方式
  • クラウドサービス方式(クラウド型アプリ方式)
  • スタンドアロン方式(会社PCの持ち帰り方式でオフラインで作業する場合)

次は、【STEP4】セキュリティ対策について解説します。

【STEP4】セキュリティ対策をしよう

【STEP4】「セキュリティ対策をしよう」では、中小企業等担当者向けテレワークセキュリティの手引き(チェックリスト)第2版(令和3年5月・総務省)に示された4つの想定脅威に対するセキュリティ対策を解説します。

4つの想定脅威は、次のとおりです。

  1. マルウェア
  2. 不正アクセス
  3. 端末の紛失・盗難
  4. 情報の盗聴

【事前対策】セキュリティ対策の優先順位

4つの想定脅威に対する対策の解説の前に、まずは、テレワーク導入時のセキュリティ対策は、完全を目指すよりも、次の点で優先順位をつけて対策をするのが良いと思います。

  • セキュリティ対策の重要性が高い(実施することによる効果が高い)もののうち
  • 実施難易度が低い(専門知識、追加コストの観点で懸念が小さい)もの

また、対策前に次の2つについて把握しておく必要があります。

テレワークで利用する機器の把握

  • テレワーク機器利用者の把握
  • シリアルナンバー等の端末固有情報の把握
  • 機器に対するセキュリティ対策の実施状況

テレワークで取り扱う重要情報の把握

  • 営業秘密など事業に必要で、組織にとって価値のある情報
  • 個人情報など、企業に管理責任のある情報

【1】マルウェア感染対策

ウイルス対策ソフトをインストール

  • テレワーク端末にウィルス対策ソフトをインストールする
  • リアルタイムスキャンを有効に設定する
  • ウイルス対策ソフトの定義ファイルを自動更新(または手動)で最新バージョンに更新する

メール利用における教育・注意喚起

  • 不審なメールを開封しない
  • メールに記載されているURLをクリックしない
  • メールの添付ファイルを開かない
  • 不審メールを除外する機能を有効に設定する

アプリケーションは安全が確認された方法でインストールする

  • 公式アプリケーションストアの利用
  • 安全が確認された方法で、テレワーク端末にアプリをインストールする

【2】不正アクセス対策

業務上必要な人のみ重要情報へのアクセスができるようにする

  • システムによるアクセス制御
  • パスワード設定

オフィス内のネットワークと公衆のインターネットの境界で不正アクセスを遮断する

  • ファイアウォール
  • ルーター

製品のセキュリティアップデートをする

  • メーカーサポート切れの製品を利用しない
  • 最新のセキュリティアップデート済みのOSやアプリケーションを利用する

【3】端末の紛失・盗難対策

データを守る方法

  • ハードディスクの暗号化
  • 早期発見のため、テレワーク端末の紛失時に端末の位置情報を検出できるようにする

USBメモリは情報漏洩対策付きを利用する

テレワーク実施者がUSBメモリで業務情報を社外に持ち出す場合は、情報漏洩対策付きのUSBメモリを使いましょう。

情報漏洩対策付きUSBメモリには次の機能があります。

  • 暗号化機能
  • パスワードロック機能
  • ウイルスチェック機能

パスワード管理

  • 「長く」「複雑な」パスワードを設定する
  • 初期パスワードを使わず、パスワードを変更する
  • 一定回数以上のパスワード誤入力で、それ以上パスワード入力できないよう制限する
  • 二段階認証や多要素認証を設定する

【4】情報の盗聴への対策

オンライン会議での注意事項

  • 参加者の本人確認(ビデオ映像や音声など)
  • 必要な人にのみオンライン会議参加のURL・パスワードを伝える

物理的セキュリティ対策

  • のぞき見防止フィルタ
  • 離席時にはスクリーンロックを実施する

【STEP4】まとめ

以上【Step4】ではセキュリティ対策について解説しました。

セキュリティ対策の優先順位は次の2点を考慮して設定します

  • セキュリティ対策の重要性が高い(実施することによる効果が高い)もののうち
  • 実施難易度が低い(専門知識、追加コストの観点で懸念が小さい)もの

セキュリティ対策前に把握することは次の2つです

  • テレワークで利用する機器の把握
  • テレワークで取り扱う重要情報の把握

4つの脅威への対策

  1. マルウェア対策
  2. 不正アクセス対策
  3. 端末の紛失・盗難対策
  4. 情報の盗聴への対策

次は、【STEP5】テレワークのルールについて解説します。

【STEP5】テレワークのルールを作ろう

テレワーク勤務・オフィス勤務のいずれでも、基本的に働く場所が「離れた場所である」以外は、職務、責任や役割は同じだと考えられます。

テレワーク導入時では、できるだけオフィス勤務と異なるルールを少なくすることをオススメします。なぜなら、異なるルールを増やすと管理の手間がそれだけ増えるからです。

前提条件

よって、このパートでは、次の前提条件で最低限決めるべきルールについて解説します。

次の条件以外は全てオフィス勤務と同じ労働条件にします。

  • 就業の場所
  • 労働時間の把握方法
  • 通勤手当の支給
  • 費用負担

雇用契約書や労働条件通知書で「就業の場所」を明示する

テレワーク勤務を導入していない場合、就業の場所は「会社所在地」など労働者が就業する場所になっています。

遠隔地に居住する社員が常に在宅勤務をする場合は、就業の場所を「自宅」にします。

原則としてオフィスへの出社勤務で、緊急事態宣言中などにテレワーク勤務を併用する場合は、次のように就業の場所を定めることが多いです。

「会社所在地」(ただしテレワーク勤務時は「○○」)

  • (在宅勤務)自宅住所
  • (サテライトオフィス勤務)サテライトオフィス所在地
  • (モバイル勤務)会社が許可した場所
令和6年4月1日~

なお、労働基準法施行規則第5条の改正により、就業の場所、従事すべき業務の内容について、「変更の範囲」の明示が義務付けられます。

「労働時間」の確認方法を決める

オフィス出社勤務では会社にあるタイムカードに打刻している場合が多いと思います。

テレワーク勤務では会社のタイムカードに打刻できないため、別の方法で労働時間を把握することになります。

例えば、次のような方法が考えられます。

  • Eメール
  • 電話
  • ビジネスチャット
  • Excel出勤簿などで自己申告
  • 労働時間中は常時オンライン接続
  • 勤怠管理ツール

テレワーク導入初期にはシステム方式やセキュリティ対策への初期費用がかかると考えられますので、勤怠管理のための初期費用を抑えるならば、最初は既存のリソースを活用すると良いと思います。

【STEP6】で勤怠管理のためのICTツールについて解説しますので、そちらもご参照ください。

「通勤手当」を見直す

通常の出社勤務では

通常の出社勤務で通勤手当を設定する場合、次の方法が考えられます。

  1. 公共交通機関の通勤定期代
  2. 自宅~会社の距離に応じて支給
  3. 自宅~会社の距離に関係なく一律支給

まずは、みなさんの会社の就業規則で、通勤手当の日割り計算方法を確認しましょう。

テレワーク勤務での交通費支給の検討を進めるときに、同時に通勤手当の日割り計算方法の見直しが必要になるかもしれません。

テレワーク勤務では

テレワーク勤務では、交通費を実費支給するケースが増えています。

さらに、在宅勤務の場合は通勤にかかる費用は無いので、在宅勤務の日には通勤手当を支給しない場合が多いです。

ただし、テレワーク勤務時に就業規則に定めのある通勤手当を支給しない場合は、就業規則の変更や、テレワーク勤務規程などの作成が必要です。
週のうち数日は出社勤務する場合

利用する交通機関の通勤定期代と交通費実費を比較して、低額となる方を支給することも可能です。

  • 通勤定期券代
  • 往復切符代×出勤日数(交通費実費)
ただし、テレワーク勤務時に就業規則に定めのある通勤手当と異なる支給方法を定める場合は、就業規則の変更や、テレワーク勤務規程などの作成が必要です。

就業規則に「費用負担」を定める

テレワーク勤務(特に在宅勤務)では、通常の出社勤務とは異なり、通信費や光熱費などの費用をテレワーク勤務者が負担することがあり得ます。

テレワーク勤務での通信費、作業用品その他の費用負担をさせるルールを作るならば、就業規則に定めなければなりません。(労働基準法第89条第5項)

機器購入費

本人所有の端末、携帯電話、プリンターなどを使用する場合が考えられます。

ただし、会社から貸与する場合は、労働者の費用負担になりません。

通信費

本人所有の通信回線を使用する場合が考えられます。

ただし、会社からポケットWi-Fiやスマートフォンを貸与する場合は、労働者の費用負担になりません。

消耗品購入費

使用頻度が少ない場合は、ペン、はさみ、のりなどの本人所有の消耗品を使用する場合が考えられます。

ただし、会社から現物支給を行う、領収書による事後清算をする、などの場合は労働者の費用負担になりません。

光熱費

在宅勤務の場合、エアコン、電灯、水道などの光熱費を本人が負担する場合が考えられます。

テレワーク手当

通信費や光熱費は個人使用と業務使用との区別が難しいため、テレワーク手当として一定額を支払う場合もあります。

テレワークの労務管理などに関する実態調査(速報版) 三菱UFJリサーチ&コンサルティング 2020年11月16日の【従業員調査】によると、会社から補助又は手当を受けている割合の合計は次のとおりでした。

  • 通信費・・・・・15.2%
  • 水道光熱費・・・5.6%
中小企業がテレワークを導入する場合には、テレワーク手当の設定を考える前に、法的拘束力のある通勤手当の見直しと費用負担について就業規則に定めることをオススメします。

【STEP5】まとめ

以上【Step5】ではテレワークのルールについて解説しました。

テレワーク勤務で最低限決めるべきルールとは

  • 就業の場所
  • 労働時間の把握方法
  • 通勤手当
  • 費用負担

法的に必要な対応は次のとおりです

  • 労働条件通知書の「就業の場所」の明示
  • 労働時間の把握方法の変更
  • 通勤手当の支給方法の変更
  • 労働者の費用負担の明示

次は、【STEP6】ICT環境づくりについて解説します。

【STEP6】ICT環境づくりをしよう

テレワークができるICT環境を整えるには、次の3つが必要です。

  1. マネジメント(テレワーク実施者をマネジメントできる仕組み)
  2. コミュニケーション(意思・感情・思考を含めた情報共有ができる仕組み)
  3. セキュリティの確保(安全に情報にアクセスして業務ができる仕組み)

それでは順番に解説します。

マネジメント

勤怠管理

労働時間の把握を目的としたICTツールです。

テレワーク勤務者が多いときに管理がしやすいメリットがあります。

勤怠管理アプリを導入するなら、給与計算事務を楽にするために、お使いの給与計算アプリと【API連携】している勤怠管理アプリを選びましょう。
API連携とは、Application Programming Interfaceの略で、API連携を使えば簡単に他のアプリと連携することができる仕組みのことです。

在席管理

テレワーク勤務中の業務が適正に行われているか確認するICTツールです。

「監視ツール」とも言われたり、あまり労働者からは好意的に思われないツールだと思います。

テレワーク導入後、必要性があるならば在席管理ツールの導入を考えてはいかがでしょうか?

具体的な在席ツールの製品例は別記事で紹介しますので、お楽しみに!

業務管理

スケジュール管理ツール

テレワークでもオフィスからでもスケジュール管理や施設の予約などができるツールです。

  • 従業員の業務スケジュールの可視化
  • 従業員間でのスケジュールの共有化
  • 会議室などの予約
ワークフロー
ワークフローとは一連の業務手続きの流れで図式化されたものです。

ちょっと、何を言ってるのかわからないですね。

具体例を挙げる方がわかりやすいと思います。

経費精算の業務手続きの例を示します。このような一連の業務手続きの流れをワークフローといいます。

  1. 【申請者→上司】経費清算を申請する
  2. 【上司→経理】申請をチェック・承認して経理に送る
  3. 【経理→最終承認者】申請をチェック・承認して最終承認者に送る
  4. 【最終承認者】申請をチェック・承認・決済して申請書を保管する

ワークフローシステムとは、紙媒体で行われているワークフローを、「申請フォーム」に電子化して業務手続き(承認・回覧など)を進める仕組みです。

コミュニケーション

会議システム

会議・ミーティングをテレワーク環境で行うためのツール・システムです。

多くのサービスがありますが、私が使ったことがあるシステムは次のとおりです。

個人的にはいずれも、使い勝手はそれほど変わらないと思いますが、接続する拠点の多さやネットワーク環境によっては違いがあるかもしれません。

有料サービスを導入する場合は、実際に無料で試してから検討した方が良いと思います。

  • Zoom
  • Teams
  • Skype
  • Google Meet
  • Cisco Webex
  • LiveOn

チャット

会議システムや在席管理ツールに付属している場合が多いです。

テレワーク環境で離れていても、メールに比べるとカジュアルなコミュニケーションができます。

  • 複数の人に同じメッセージを同時に送るとき
  • 簡潔な文章や一言で済むようなメッセージを送るとき
  • すぐに見てもらいたいとき

セキュリティの確保

【STEP3】【STEP4】で解説しましたので省略します。

【STEP6】まとめ

以上【Step6】ではICT環境づくりについて解説しました。

テレワークができるICT環境を整えるには、次の3つが必要です。

  1. マネジメント(テレワーク実施者をマネジメントできる仕組み)
  2. コミュニケーション(意思・感情・思考を含めた情報共有ができる仕組み)
  3. セキュリティの確保(安全に情報にアクセスして業務ができる仕組み)

次は、【番外編】テレワーク導入に使える助成金・補助金について解説します。

テレワーク導入に使える助成金・補助金

テレワーク導入のために、ICT機器の購入、情報セキュリティ対策、テレワーク規則・在宅勤務規程の整備などのために初期費用がかかります。

厚生労働省の助成金、経済産業省の補助金をはじめ、各自治体独自のテレワーク導入に関する助成金・補助金などを活用して、テレワーク導入への壁を低くできればと思います。

下記の記事では全国共通の厚生労働省の助成金、経済産業省の補助金のうちテレワーク導入に使いやすいと思われるものを3つ選んで解説します。

【ケース別】テレワーク環境構築事例

別記事「テレワーク環境構築事例『コスト重視型』『セキュリティ重視型』『バランス型』3選」に詳しく解説していますので、ご参照頂きますと幸いです。

むすび

以上、長くなりましたが、テレワーク導入の概要を解説しました。

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